『なぜ、学ぶ習慣のある人は強いのか? 未来を広げるライフシフト実践術』(徳岡晃一郎、佐々木弘明、土屋裕介著、日本経済新聞出版刊)は、何歳になっても自分の人材価値を高く保つための本だ。
「年齢」「人材価値」。
これだけでピンとくる人は、そもそも危機感を持っている人だろう。終身雇用制は風前の灯で、定年は後ろに後ろへと逃げていく。年金だけで暮らしていけるとも限らない。その一方で、働くとしても年を重ねた自分に必要とされる場所があるかどうかはまったくの未知だ。
だから、社会人こそ学び、学び続けなければならない。
それが自分の価値を加齢によって目減りさせないための、おそらく唯一の方法だからである。
ただ、会社にしがみつくことは自分の人生にとって分が悪いとはわかっていつつも、「今さらまた学べといわれても何をすればいいかわからない」という人が大多数だろう。社会人になってからも貪欲に学んだり、自己研鑽を怠らずに続けるのは、「一部の意識の高い人だけのもの」というイメージは根強い。
実際、これはイメージだけではないようだ。
厚生労働省の「能力開発基本調査」(2018年度)によると、前年の2017年に「自己啓発」を行ったと回答した人は、労働者全体で約35.1%、正社員では44.6%となった。ここでいう「自己啓発」とは、社業を離れた場での学びである「越境学習」だけでなく、テレビやラジオ、専門書などを利用した自学自習も含まれる。
近年「圧倒的に学ばない国」と言われることもある日本だが、社会人の半分以上が一切の学びをしていない状況なのである。
しかし、周囲が学ばないからこそ、学ぶことで周囲との差別化ができるとも考えられる。
今の自分の仕事の周辺分野でも、まったく関係のない分野でも、学び続けておくことで、会社で行き詰まった時や必要とされなくなった時に、人生の方向転換が可能になる。今の社業のプラスになる場面もあるだろう。
心に留めておくべきことは、学ぶことにも自己研鑽にも「正解」はないということ。
「何をすればよくわからないけど、とりあえず何かやってみよう」
スタートはそれで十分である。
本書では、大切なのは
・変化を恐れないこと
・何歳になっても成長することはできると信じること
・挑戦しつづける気力を持ち続けること
というマインドセットなのだと説く。
また、本書では、社会人の「学び直し」こそ、「何を学ぶか」「どう学ぶか」よりも、「なぜ学ぶのか」を強く意識するべきだとしている。
好きなことを、好きなように学べばいい。だが、なぜ学ぶのかは明確にしておいた方がいい。それによって、自分の奥底に眠っていた「そういえば、昔はこんなことがしたかった」「こんなことに関心があった」という意思とモチベーションが掻きたてられるからである。
大学に入り直して、社会人学生として本格的に学ぶ(もちろんそれでもいいが)ことだけが「学び直し」ではない。休日に図書館で少し本を読むところから始めるのでもいいし、気になっていたことを調べてみるのだって立派な勉強だ。
本書は、学ぶことの重要性と意義だけでなく、そこから広がる未来と可能性についても詳しく解説している。
「このままじゃいけない」と思いつつも何をしていいかわからない人は、まず本書を手に取るところからはじめてみてはどうだろう。
(新刊JP編集部)
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