だらだらと長いだけの会議、上司の雑談に付き合わされる打ち合わせ、30分で終わるような会議を1時間で設定している定例報告会...などなど、会議や打ち合わせの類はむやみやたらと長くなりがちである。
会議が長引いた分だけ通常業務に割ける時間は減っていき、仕事が終わるのも遅くなる。必要以上に長い会議にいいことは何もない。一方で、この会議のムダを自覚的に削減して、素早い意思決定を行っている企業がある。トヨタ自動車だ。
『トヨタの会議は30分 ~GAFAMやBATHにも負けない最速・骨太のビジネスコミュニケーション術』(山本大平著、すばる舎刊)では、新卒でトヨタ自動車本社にエンジニアとして入社し、8年に渡りトヨタでビジネスコミュニケーション、社会人としての基礎を学んだ山本大平氏が、トヨタ自動車で実践されていたコミュニケーションの特徴と、効率的な会議のノウハウを紹介する。
トヨタ自動車には「とにかくムダを嫌う」文化がある。業務上のちょっとしたムダでも、常に全力でなくしていく。トヨタ自動車には、当たり前のことを継続的に、突き詰めて行う文化があるのだ。これは会議も同様で、必要以上に長かったり、生産性の低い打ち合わせをすると、上司に叱責されるような会社なのだそう。
では、どんな会議が行われているのか。
まず、本書のタイトルにあるように、トヨタでは特別な場合を除いて、会議や打ち合わせは原則として30分で設定するよう口うるさく指導される。このように設定すると、時間が限られているため、余計な世間話をする暇はない。そして、一つ前の会議で「次、何を話し合うか」まで決めることで、いきなり本題に入れるようになっている。
ただし、実際の会議は、参加している人のコンディションがその都度違うもの。そのため会議を始めるときは、参加者の様子や表情、全体の雰囲気などを「5秒」ほど見回して、いきなり議論に入っても大丈夫そうか確認するのだそう。
そこで、少し気が緩んでいる人がいると感じた際は、参加者に声をかけ、手短に前回までのおさらいをして、参加者のマインドを揃える。もちろんおさらいも何分もかけるのではなく、30秒ほどの時間でまとめる。こうすることで、参加者が意識を集中するための間をとって、議論にスムーズに入れるのだ。
この「5秒で状況判断」もトヨタの人間観察法だ。これは単に見た目で判断するのではなく、相手が身につけているものや表情、しぐさ、視線、声量、雰囲気、名刺の出し方などから、相手の人物像を自分なりに分析する。自分なりに相手の人物像や心理状態を見抜こうとする姿勢、クセをつけることで、交渉事でどのような対応をすればいいかも、わかるようになってくるということだ。
30分で効率的な会議を終わらせるには、コミュニケーション能力が必須となる。本書では、「時短に役立つ仕事術」「確実に相手を射抜く・仕留めるコミュニケーション術」「本質思考」「教育力」「良質な人間関係の構築能力」の5つのトヨタ流のコミュニケーション術を紹介。これらのスキルを身につけることで、30分会議をはじめ、さまざまなビジネスシーンで活かすことができるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)
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