ストレスがたまりやすく、精神的な負荷の大きな仕事の一つとして挙げられる「接客業」。
高圧的な客もいれば、クレーマーもいるなかで、様々な性質の人に心を添わせなければいけないのはやはり疲れるものだし、特に日本では、「お客様は神様」「おもてなし」の価値観が根強い。理不尽なまでに客の立場が高いというある種の伝統が、接客する人の心理的負担になっているのは否めないだろう。
あたりまえだがお客様は神様ではないし、「おもてなし」を前面に出した接客がどこまで必要とされるかは、場所や商品・サービスの価格、あるいは報酬にもよるはず。少なくとも、こうした価値観の呪縛から逃れることが接客業のストレス軽減には必要なのだろうし、過剰な「滅私」も考えものだ。
『元JALのトップCAが明かす ベストパフォーマンスを発揮する人の「接客力」』(桜井妙著、大和出版刊)は、えてしてストレスを感じやすい接客業で、いかに自分の心を守りながらいいパフォーマンスを出すかがテーマになっている。
接客業の代表格であるCAもまさにストレスがかかりやすい職業。本書によるとCAの中でも優秀な人ほど、「自分の心を守る術」を身に着けているという。その一つが「どんなに忙しくても、自分をいたわる時間を確保すること」。
知っておくべきことはかならずしもリラックスに努めたり、自分にご褒美を買うことだけが自分をいたわることではないということ。将来のための勉強に没頭したり、体を鍛えたりすることも、自分のためだけの時間を過ごすという意味では「自分をいたわること」であり、質の高いストレスマネジメントになる。
また、接客する側のメンタルは、客側の言葉が強く影響する。
攻撃的なクレーマーやハラスメント客は問題だが、彼らの悪質性はすでに認知されているため、ある程度「問題のある顧客」として対処できる。むしろ、心を傷つけられやすいのは「普通の顧客が放つ無神経なひとこと」なのかもしれない。
こうした発言は本人に悪気がないからこそ厄介なもの。
体格のいいスタッフに「レスリングでもやっていたの?」と聞いたり、年齢を聞いたりといったことは「アウト」ではあれ、何気なく聞いてしまう人はまだまだいる。
こうした不用意なひとことに備えるためには、相手の言葉をポジティブに変換する習慣を持つと効果的。どんな言葉もプラスの意味を見出せる。「優柔不断」と言われたら「思慮深い・思いやりがある・やさしい」と自分の中で変換してしまえばいいのだ。
◇
自分の心をストレスから守る方法が確立できれば、接客相手をよく観察する余裕も出てくるはずで、そうなると相手も自分も快適に思える接客もしやすくなるといういい循環が生まれる。いい接客は、まず自分を整えることからはじまるのだ。
本書では、ここで紹介したようなストレスマネジメントの方法だけでなく、相手から信頼されやすい接客やクレームを最小限にとどめる方法など、実用的な接客術にも踏み込んでいる。
ストレスを抱えながらも「仕事だから仕方ない」「接客業にストレスはつきもの」と諦めている人こそ、手に取るべき一冊ではないだろうか。
(新刊JP編集部)
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