「いけないこと」という共通認識はあっても、昔から今まで「不倫」は決してなくならないし、これからもおそらくなくなることはないだろう。
人はなぜ将来がない恋にハマってしまうのか?
『さよならジュード』(SAKURA著、幻冬舎刊)はそんな問いについて考えるヒントになるかもしれない。ここで描かれているのは、5年にもわたる不倫の一部始終である。
シングルマザーである主人公の「私」と不倫相手であったイギリス人国際弁護士の「ジュード」はどのように不倫の「沼」に落ちていったのか。著者のSAKURAさんにお話をうかがった。その後編をお届けする。
――幸せだった時間はどれくらい続いたんですか?
SAKURA:最初の2年間は彼のウソのおかげで天国でしたし、次の2年間は彼のウソで地獄でした。5年目で復讐して終わりにしたという感じです。
――ずっと天国でいられる不倫カップルっているんでしょうか?
SAKURA:色々な男性を見てきましたが、上手に不倫する人もいるんですよね。彼らはどうしているかというと、やはり愛人のこともちゃんと面倒を見るんですよ。「愛している」っていう言葉だけじゃなくてね。
既婚者が独身者と恋愛するということは、相手の時間を無駄にしている部分があるじゃないですか。だから結婚してあげられないのなら、その代わりに経済的な面倒をみるとか、そういうことで釣り合いをとるんです。
――ジュードにはそういう不倫の「スキル」はなかったという。
SAKURA:そうですね。おいしいお店に連れて行ってくれたりはしたんですが、そういう時は会社のクレジットカードを使っていましたし、彼は出張で日本に来ていたので、基本的に彼自身の懐は痛まないんです。だけど会いに行く私の方はお金がかかるわけですよね。そこの配慮はなかったですね。
――国際弁護士でかなりの高所得者だったそうですが、自由になるお金はあまりなかったようですね。
SAKURA:銀行口座が夫婦一緒のものだったので、大金を下ろしたりしたらすぐ奥さんにバレてしまう状態だったんですよね。
――隠し口座を作ったり、できることはありそうですが...。
SAKURA:そこは奥さんが厳重に管理していたようで、全部握っていないと気が済まない人だったようです。彼が日本にいた頃は多少自由になるお金はありましたが、彼がNYに異動になってからは自由になるお金はそう無かったです。奥さんは彼を疑ったら、携帯電話もいつでも取り上げるし、完全に奥さんに管理されていましたね。
――どうして夫婦間でジュードの立場が弱いのか不思議でした。
SAKURA:逆らえないんですよね。私と付き合うことになったのも、もともと奥さんの不倫があったからだと聞いていたのですが、それでも彼の立場は弱かった。「別れたい」ということは常々言っていたのですが、一生無理だろうなと思っていました。
――ただ彼が妊娠した主人公にしたことはかなりひどいです。そこは本編を読んでいただきたいですが...。
SAKURA:そうですね。あの事があったから復讐を考えるようになったんです。
――出産を諦めさせるための理屈が不可解でした。「それが二人のためなのだ」と言い張っていましたが、冷静に考えると出産を諦めることのどこが二人のためなのかと...。
SAKURA:最終的に保身に走っていましたよね。結局流産してしまったのですが、その後に「こうなったからには二人の愛にフォーカスしたい」と私は言いました。そして「私が(ジュードの暮らす)アメリカに移住しようかな」と言ったら、それはダメだと。「僕に子どもと離れろって言うの?」と言われました。
――身勝手ですね...。ただ本人からしたら不倫相手が日本にいるから都合が良かったんでしょうね。定期的に出張で行く場所で会うのがいいわけで、家の近くに来られても困るという。
SAKURA:それはあるでしょうね。
――不倫が批判の対象になりやすい昨今ですが、世の中から不倫がなくなることはないはずです。そんななかで不倫を「遊び」として割り切れる人と、深みにはまってしまう人は何がちがうのでしょうか。
SAKURA:これは本人だけでなくて、相手の問題もあるんですよね。相手が既婚者だった場合、向こうは家庭で奥さんにもらえないものを求めてくることが多いんです。よくあるのが、奥さんや夫をもうセックスの対象として見られない、というケースです。そうなると自分というよりも向こうが「本気」になってしまうことがあります。
「遊び」で済ませられる人は、態度で示せる人なんじゃないかと思います。「〇〇ちゃんとは遊びだからね」と相手にちゃんと言う。それであれば相手もわかるじゃないですか。「なんでこの人の遊びに付き合わないといけないの?」となったらそこで関係は持たないでしょうし、それでもよければ続いていく。
そうやってはっきりした態度をとらないで、何かしらの「将来」をほのめかしたり、「妻とはもう終わっている」みたいなことを言ったりして、相手に期待させてしまうと深みにはまってしまうケースが多いんじゃないかと思います。
――なるほど。家庭に何かしらの不足感を持っていると、それが埋まる相手が見つかった時に本気になりやすい。
SAKURA:私の場合も向こうが「奥さんに何度も浮気されて、でも君と出会って君を愛するようになった」と、表現豊かに言ってくるわけですよ。確かにそれは本当だったとしても、だったらちゃんと言った通り離婚しようよって。それを何だかんだの嘘と現実で彼はしなかったんです。
――今現在、不倫で悩んでいる人にアドバイスをいただきたいです。
SAKURA:偉そうにアドバイスできる立場ではないのですが、一ついえるとしたら「今苦しい不倫なら、これからも苦しいままの可能性が高い」ということです。今現在、ちょっとの喜びのためにたくさんの犠牲を強いられているのであれば、一度深呼吸をして考え方やものの捉え方を見直した方がいいと思います。幸せになる選択肢はたくさんあるので、視野を広くもっていただきたいです。
あとは、私自身もそうだったのですが、相手を甘やかす状況を作ってしまったんですよね。仕事で忙しい相手に私が合わせてしまったり、既婚者である彼の都合を全部飲んでしまったところがありました。これは今考えるといいことではなかったと思います。
たとえば、相手が離婚を匂わせているのなら「ここまでは待つけど。この時期までに離婚しないならもうおしまいね」という風に「締切り」をもうけたりして、自分だけが我慢する環境にならないようにしていただきたいですね。結局、甘い言葉よりも行動の方が多くを語るので。
――甘い言葉よりも行動を見なさいというのは真理ですね。
SAKURA:そうですね。あとは自分を一番に労わってほしいです。不倫相手はあなたのことを本当に思っているわけではないので。だから、不倫相手よりも自分のことを大切に思ってくれる友達とか周りの人を大切にしてくださいね。
(新刊JP編集部)
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