会社という組織の中で、課された仕事を忠実に従順にこなし、尽くす姿勢を見せて昇進していく人を「組織のイヌ」と呼ぶことがある。良くない文脈でその言葉が使われることもあるが、基本的には多くの人が「イヌ」タイプの働き方をしているのではないか。
一方、組織にはいるけれど、自由気ままで肩書きや昇進にはあまり興味なし。ただ、自分の意志をはっきり持って働いている「変わり者」がいる。そう、まるで「ネコ」のように。
さらに、この「イヌ」と「ネコ」の進化系に「ライオン」と「トラ」がある。
「ライオン」は群れを統率するリーダー的な存在で、組織の中で王道路線を歩んできた人といえる。
「トラ」は会社に一人はいる「何をしているのか見えにくいが、とにかくハイパフォーマンスを出す人」のことで、常識に捉われない考え方や社命よりも使命を優先する姿勢から、評価されにくいものの、一目置かれていることが多い。
組織の中での働き方のスタンスは、この「イヌ」「ネコ」「ライオン」「トラ」という4つの動物に当てはめることができる。「イヌ」は上位の「ライオン」を畏怖し、「ネコ」は上位の「トラ」に憧れを抱いている。「ライオン」と「トラ」は互いに敬意を抱いているが、「イヌ」と「ネコ」は相容れないことが多い。
それぞれのルール観もバラバラだ。「イヌ」は、ルールとは「守るべきもの」と考え、「ネコ」は「息苦しいのでキライなもの」と認識する。一方「ライオン」は「群れを統率するためのもの」とし、「トラ」は「パフォーマンスを上げるための作法」と捉える。
これまでは組織重視の「イヌ」「ライオン」タイプが評価されやすかったが、実力主義や多様性の広がりによって、「ネコ」「トラ」タイプの働き方にも注目が集まるようになった。
もし、あなたが組織に忠実でいることに息苦しさを感じているのであれば、ぜひ『「組織のネコ」という働き方』(仲山進也著、翔泳社刊)という本を通して、組織の「トラ」を目指してみてほしい。
『「組織のネコ」という働き方』は、組織の中においても自由に活動し、使命に向かって動く健やかな働き方を伝授する一冊だ。
なかなかパフォーマンスを出せないと悩んでいる人は、もしかしたら「ネコ」タイプなのに、「イヌ」的な働き方をしてしまっているかもしれない。ならば、まずは「ネコ」の働き方を実践し、さらにその上位の「トラ」になれば、自分の実力が最大限に発揮できる働き方ができるようになるだろう。
「トラ」のように働いている人を見ると、まさにユニークで型破り。そして10個の共通特性が見えてくる。
(1)社命より使命で働く(社内で浮いている)
(2)「レールから外れた経験」などの「痛みを伴う転換点」がある
(3)突出した成果と個性がある(お客さんの一部に熱狂的ファンがいる)
(4)経営層に理解者(庇護者)が存在する
(5)1人で全部やる「一気通貫型」の仕事をした経験がある
(6)群れに組み込まれるのがニガテすぎる
(7)異種のトラ(ベンチャーのトラ、ヤンキーのトラ)と仲良くなれる
(8)社外の人とチームをつくっている
(9)人をつないだり、自走支援の活動をしている
(10)展開型キャリア(運ばれるキャリア)で活動が広がっている
『「組織のネコ」という働き方』p.111より
少し細かく見ていこう。
例えば(1)の「社命より使命で働く」は、上司からの指示を全うすることだけを仕事と考えず、「顧客のため、社会のため、やるべきことは何か」を常に考えて動いているということ。指示されたこと以外にも手を出すので、会社内では浮いた存在になりがちだが、その中身は実直だ。
(2)の「『レールから外れた経験』などの『痛みを伴う転換点』がある」と、上司やクライアントに忖度しない選択ができるようになる。社内の評価が下がっても、自分が正しいと思える選択をする。実はこれは組織の中にいてもなかなかできないこと。「トラ」はそうした経験があるからこそ、忖度しない選択をし、成功することができる。
とはいえ、トラは一人では組織の中で生息することはできない。(4)「経営層に理解者(庇護者)が存在する」というのも、このトラの特徴だ。この経営層の理解者もまた「トラ」タイプの場合が多く、「あの人(経営層のトラ)がいるから自分はこの組織でがんばれる」と信頼関係ができていることが多い。
では、「ネコ」タイプの人が「トラ」を目指すために何が必要なのか?
そこには4つのステージがあり、仕事のスタイルを変えながらステージアップしていくことが求められる。
1、「加」ステージ...仕事の選り好みをせず、できることを増やす
2、「減」ステージ...得意でない仕事を手放し、強みに集中する
3、「乗」ステージ...強みと強みを掛け合わせる
4、「除」ステージ...仕事を因数分解して、ひとくくりにする
最初から自分のやりたいことをやるだけでは、「トラ」にはなれない。まだ見つかっていないかもしれない本物の強みを見つけることからはじめてみるといいだろう。
本書は個人の働き方だけにとどまらず、「組織作り」という観点からも「ネコ」「トラ」の重要性について説明しており、彼らをどう活かせば組織にシナジーを生みだすことができるかまでつづられている。
組織に大きな変革を起こすのは「変わり者」だ。そう、ここでいう「トラ」や「ネコ」といった存在である。今後、飛躍するのは、彼らのような存在の力を最大限引き出すことができる企業なのかもしれない。
『「組織のネコ」という働き方』はユニークな視点で書かれた、新しい「働き方」の本である。
(新刊JP編集部)
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