先日まで国際会議「COP26」が開催されていたこともあり、ニュースなどで英語を使ってスピーチをする人を見る機会が多かったが、筆者を含め普段英語を使わない人にとっては、あまり詳しくない話題についての英語を聴きとるのはハードルが高い。
日常でも、街中で英語圏の人に道を聞かれたり話しかけられたら、しどろもどろになってしまう人は多いはずだ。そうなると「自分は英語ができない」と感じるし、人から聞かれてもそう答えてしまう。日本人で「自分は英語ができる」と堂々と答える人は、実際かなりの実力者のはずだ。
ただ、日本人の多くは一応中学・高校と6年間英語の授業を受けている。だから、知っている英単語はそれなりにあるし、簡単な文章なら読むことができる。それなら英語が「できる」といってもウソにはならないのではないだろうか。
日本人が「自分は英語ができない」と感じるのは、語学力の問題ではなくメンタルの問題。『英語コンプレックス粉砕宣言』(鳥飼玖美子、齋藤孝著、中央公論新社刊)はそんなことを教えてくれる。
そもそも日本人は「英語がちゃんとできなければいけない」と思い込んでいるところがある。ビジネスなどで英語が必要な人もいれば、ごく簡単な英会話ができれば十分な人もいる。英語との付き合い方は人それぞれでいいし、「できる」の基準も人それぞれのはずなのに、皆完璧な英語を習得しなければ話せない、と思い込んでしまっている。
本書はそんな日本人の英語コンプレックスについて、身体論からコミュニケーションを考える明治大学教授の齋藤孝氏と日本の英語教育の第一人者、異文化コミュニケーションの権威でもある立教大学名誉教授の鳥飼玖美子氏が語り尽くす。教育の現場をよく知る二人が、コンプレックスから自由になるための教育論・学習法を対談形式で紹介する一冊である。
日本語の「雑談」のように、なんでもいいから適当に答える会話は英語でも存在する。それほど深い意味のない挨拶代わり、人間関係作りの雑談を「スモール・トーク(small talk)」という。ビジネスなどで本格的に英語を使う人は別として、現状このスモール・トークができれば十分と思っている人は少なくないはず。
このスモール・トークを手っ取り早く習得するには、役者のように演じることが一番なのだそう。台本のセリフを覚えて、ペラペラ風に話せるように練習して、その場その場で使い分ければいい。各シチュエーションに合わせたフレーズを複数覚えておけばいい。少なくともはじめはそれで十分だ。
スモール・トークで万能に使えるのが「by the way(ところで)」というフレーズ。2人の対話の場合は、相手の言ったことを無視していきなり話題を変えるのでは失礼になるので、相手の言ったことちょっと受けてから「by the way」で「なるほどねえ。ところで」と話題をつなげることができる。また、何人か集まって話していて、会話に食い込めない場合、「by the way」で「ところで」と強引に話の輪に入り込んで、自分の言いたいことを喋ることもできる。
質問してその答えが聞き取れても聞き取れなくても、ちょっと受けてから「by the way」と転換して、自分の話に持ち込むことで、いちおう英語でコミュニケーションがとれたことになる。
つまり、スモール・トークで重要なことは、相手の話を理解することよりも「持ちネタを用意する」こと。とりあえず10個ほど持っていれば、どんな場面でも応用できるという。
齋藤氏と鳥海氏の会話から、英語は難しい語学という先入観にとらわれていたことに気づくはず。英語との付き合い方を見直すことで、英語をもっと身近に、楽しく学習できるようになるはずだ。
(T・N/新刊JP編集部)
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