仕事をしていると、周囲との実力差に焦ったり、転職や独立のタイミングで迷ったりと、様々な悩みに直面する。人生も仕事も「答えのないゲーム」。このゲームを後悔なく勝ち抜いていくためには、どんな物事の見方や考え方をしていけばいいのだろうか。
このほどオーディオブック版が配信開始した『変える技術、考える技術』(実業之日本社刊)は、ボストンコンサルティンググループ(以下、BCG)でマネジャーを務めた高松智史さんが今日の仕事にも、明日のキャリアにも役立つ思考の基礎を授ける一冊だ。
今回、新刊JPはビジネスパーソンから仕事の悩み、キャリアの悩みを募集。集まった悩みを高松さんにぶつけてみた。意外な回答が続出の悩み相談、前編をお届けする。
本を読ませていただきました! 高松さんがBCGでマネジャーまで昇進して、独立してからも活躍できたのはいい師匠を持てたからだと書かれていました。私もそういうメンターのような人がいたらいいなと思っているのですが、今ところ、職場に尊敬できる年長者がいません。いい師匠と巡り合えるかどうかは運次第なのでしょうか。(20代・金融)
高松:これはね、全然違います!運じゃないです。そもそも尊敬できる年長者がいないというのがまちがっていて、たとえば野球の落合(博満:元中日ドラゴンズ監督)さんって、自分の会社の部長にいたら絶対近づきがたい人じゃないですか。
編:たしかにそうですね。実力は誰もが認めますが...。
高松:テレビで見ると「すごい人だな」と思うけど、同じ会社にいたら絶対感じの悪い人のように見えるんですよ。でも、これが大事なことなんですけど、感じが悪いと思うんだとしたら、それはまだ距離が遠いんですよ。その人が尊敬できるかどうかなんてもっと近づかないとわかるわけがない。
3億円プレーヤーがそのへんの若手に愛想を振りまくわけないじゃないですか。まして自分の哲学を説明する理由もない。そういう人ってそれこそテレビ越しに遠い距離から見るとかっこよく見えますし、同じ場にいるだけだと感じ悪い人に見えるものです。でも、もっと近づいて抱きしめるくらいの距離に行けば、また見え方が変わるんですよ。
編:本の中では「クリンチ」と表現していますね。
高松:そうそう。ボクシングでいう「クリンチ」の距離まで近づけばいい。そこまで近づけてないなら尊敬できるかどうかなんてわかるわけがない。
それと「メンター」をどう考えるかですよね。漠然と「人生のメンター」として考えるから尊敬できるかどうか、という話になるわけです。仕事をする上での「スキルのメンター」であれば、相手の人間性は問題にならないじゃないですか。
だから、メンターを探すのであれば、まずは「スキルのメンター」から入るべきです。身につけたい能力やスキルを持っている人がいるなら、嫌な奴でも近づいていけばいい。近づいてみたら人としても尊敬できる人かもしれないじゃないですか。「スキルのメンターの先に人生のメンターがある」ということは知っておくべきです。
何かと相対したときに、考え込んでしまう癖があります。例えばメールなどでも、即レスをしようと思っているのですが、どうやって書いたら相手が気分を損ねないか考えてしまい、どうしても遅れてしまいます。以前は直接のコミュニケーションにおいて、打ち合わせなどでそういうことに悩んでいたのですが、今は社内チャットが導入されて、社内のコミュニケーションの速度が速くなり、それについていけてない状況です。思考の速度が鈍いということも理由の一つだと思うのですが、考え込まず、どんどん跳ね返していける術を身につける方法を教えて下さい。(20代・IT関連・営業)
編:こちらはいかがでしょうか?本の中では「メールには即レスせよ」とされていましたね。
高松:これは思考の速度の問題ではないですね。「人間は無視されるのが一番つらい」ということをわかっていないだけなんですよ。
たしかに、僕は本の中で「則レスしなさい」と言っています。でも、それって「その質問に即返答せよ」ということではないんです。たとえば日程調整のやり取りをしているとして、この相談者の方の場合は、少し時間が経って自分の日程がわかったタイミングで返信するということでしょう?
それはダメです。僕が言っているのは「まだ日程がはっきりしないので、少し待ってください」ということを「即レス」しなさいということなんです。
編:わからないなら、「わからないから少し待ってください」と即レスするんですね。
高松:そう。返信がなく無視されていることが問題なので、返信自体はすぐにしてください。まだ日程が見えないこともあるでしょうし、答えに悩むこともあるでしょう。それであれば「今考えているので、ちょっと時間もらえますか」と返せばいいんです。
だって恋人にプロポーズした時に、何も答えずに黙って帰っていかれたら嫌でしょ(笑)。OKでもNOでも「ちょっと考えさせて」でもいいから何らかのリアクションはしないと相手が困ってしまうわけで、それは早い方がいいですよね。「間」って、空けば空くほど意味を持ってしまうので。
編:それはわかります。そして相手はその間の意味を考えてしまいますよね。
高松:プロポーズの話でいえば「ちょっと考えさせて」とすぐに言われた時はけっこう脈があると思いますが、二年半後に「ちょっと考えさせて」ときたらびっくりするじゃないですか(笑)。
もう一つ、これは日本人があまりわかっていないことなのですが、待たせれば待たせるほど相手の期待値は上がっていくんですよ。僕はコンサルティングファームで働いていましたが、上司にパワーポイントの資料作成を頼まれたとして、二日後くらいに送ろうとすると、上司側は「めちゃくちゃいいものができたんだろうな?」という感じになっているわけ。
編:これだけ待たせたからには...ということですよね。
高松:そうです。だからその場で作ってパッと返してしまったほうがいいんです。だから、即レスせずに相手を待たせるってことは、ハードルを上げてしまう選択をすることだと考えた方がいい。
編:この方も期待値を上げたいわけではないと思います。
高松:そうでしょ。だから自分で自分の首を絞めているだけなんですよ。極端にいえば、返信の内容自体には人ってそんなに興味ないんです。でも返信が来ないと興味というか、イライラが始まってしまう。
「ちょっと2、3日、時間いただいていいですか」とすぐに返しておけば、ボールはこちらにあるわけですから、相手はその件を忘れておけるわけです。でも返事がないうちは相手はその件を気にしつづけないといけない。それが面倒なんですよ。
僕だって今でも「即レス」は徹底しています。自分が教えている「考えるエンジン講座」の授業中であっても、授業しながらメールを返していますし(笑)。
(後編につづく)
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