誰もがうらやむ学歴があっても、社会に出てから活躍できずに埋もれてしまう人もいれば、学歴はさほどでなくても社会に出てから大化けする人もいる。
社会に出ると、そんな実例を嫌というほど目にする。
だから「学歴がすべてではない」とよくわかっているのに、我が子のこととなると「まずは学歴を」となってしまうのは、子育ての矛盾といえるかもしれない。
もちろん学歴自体が悪いわけではない。問題なのは「学歴だけの人」「大学合格時や就職時が人生のピークだった人」になってしまうことだ。我が子がそうならないために、家庭でどんなことができるのか?
『文庫版 デキる社会人になる子育て術 元ソニー開発マネージャが教える社会へ踏み出す力の伸ばし方』(鬼木一直著、幻冬舎刊)では、経済産業省が2006年に提唱した「社会人基礎力」を土台に、社会に出てから活躍できる人の条件と、その条件を満たす能力の身につけ方を解説していく。
社会人基礎力とは大きく分けると3種類
・前に踏み出す力(主体性、働きかけ力、実行力)
・考え抜く力(課題発見力、計画力、創造力)
・チームで働く力(発信力、傾聴力、柔軟性、情況把握力、規律性、ストレスコントロール力)
これらはいずれも、家庭教育で育んでいくことができるという。
では、たとえば「考え抜く力」はどのように家庭で身につけさせることができるのか?
「どうして空は青いの?」「なぜ雲は落ちてこないの?」など、子どもは親に素朴な疑問をぶつけるもの。こんな時、どう答えるかで、子どもの考える力は変わってくる。
大事なことは、親は必ずしも「科学的に正しいこと」を答える必要もなければ「スマホで調べてみましょう」と正解を探す必要もないということ。こんな時、親は安易に答えを与えるのではなく「一緒に考えてみましょう」と、子ども自身が頭をひねる方向に持っていくことなのだとか。
その結果、子どもが考えついたことが「海が青いから空も青い」でもいいし、「神様が青い絵の具で塗ったから」でもOK。その答えに納得がいかなければ、子どもは自分で調べ、もっと考えるはず。この繰り返しが考える力を育んでいくのだ。
親としては、子どもが自ら考え、自ら学ぶようにしたいところだろう。ならば、「勉強はキリのいいところまで終わらせてからテレビを見てね」などと言って、「キリのいいところ」までやらせてしまっているならば、もったいない。
テレビを見ていて、いいところでCMに入ると続きが気になるように、勉強も中途半端なところで終わった方が、続きをやりたくなる。これを「ツァイガルニク効果」という。
親は、子どもが遊んでいると「もう9時だから終わりにして早く寝なさい」と言い、勉強していると「キリのいいところまでやって終わらせなさい」と言う。しかし、本当は逆なのだ。
◇
・前に踏み出す力
・考え抜く力
・チームで働く力
これらは社会人になってから自然に身につく人もいれば、そうでない人もいる。できることなら子どものうちから家庭の中で育んでおきたいところ。そのために親は今何をすればいいかを、本書は教えてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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