昭和女子大理事長・総長の坂東真理子さんには赫々たる履歴を積んだ「偉い女性」のイメージがある。総理府に婦人問題担当室が発足したとき最年少の担当官として参加、これがのちの男女共同参画室になる。初代の男女共同参画局長であり、女性の社会進出を推進してきた先駆者である。その坂東さんが2021年5月、『幸せな人生のつくり方』(祥伝社)を出版した。55冊目の著書であり、坂東本の発行部数累計は460万部になるという。
坂東さんを本の世界で有名にしたのは2006年に出版された「女性の品格」(PHP新書)である。300万部を超す大ベストセラーとなった。「礼状が書ける」「約束を守る」「型通りの挨拶ができる」など、具体的なふるまい方のアドバイスだった。立派な経歴の女性リーダーのイメージからすると意外な内容だった。
実際の坂東さんは「偉い人」の印象がない人である。都会生活が長いのに今も富山弁丸出し、ワイン好きのしゃれたおばさん(失礼)である。女子大の総長、高級官僚出身の雰囲気がない。その雰囲気がそのまま著書に出てベストセラーとなったのかもしれない。
「品格」は33冊目の著書だった。それまではほとんどが初版限りで終わっていた。「女性は挑戦する」「米国きゃりあうーまん事情」「モザイク社会の女たち」「オトコ社会と付き合う法」「女性管理職の時代」などなど。著書は坂東さんの建前のイメージを背負っていた。
「品格」が売れ出したのは出版の翌年からだった。テレビドラマ「ハケンの品格」が2007年1月に放送された。それも売れ行きを後押ししたと著者は言うが、それだけではあるまい。
「幸せな人生のつくり方」は「品格」のように実践アドバイスを10か条にまとめている。例えば、「今していることを15分、心を込めて取り組む」「過去を思い出して悔やまない」「大きな悲しみや苦しみに直面したときは、愛する人や仕事や趣味で気分を晴らす」「少しでもいいので人のために自分のお金や時間を使う」などで、今を充実させることを説く。
これならできるかもしれないという簡単なことが並んでいる。しかし、これがなかなかできないのだという。
坂東さん自身はどうか。
最近ようやく、自分よりうまくやっている人に「おめでとう、私も嬉しい」と言えるようになったという。つい、うらやましくてなかなか言えなかった。そして、第10条が道半ばだと。その10条は「自分を見捨てず、大切にし、人生を生ききる」である。
この飾らない率直さが、坂東本の説得力である。
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