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楽器を演奏する人としない人との「明らかな違い」とは? 「音楽」と「脳」のすごい関係

「音楽する」は脳に効く

 脳の活性化にいいことといえば......勉強? 運動? 実は、脳には「音楽」が効く!

 『「音楽する」は脳に効く 弾く・聴く・歌うで一生アタマは進化する』(Gakken)は、音楽が脳にどんな影響を及ぼし、音楽をどう活かせるのかを、医師や専門家が解説した本だ。本書によると、音楽は子どもの脳の開発に役立ち、大人の脳の老化防止・認知症予防にもなるそう。いったいどんなメカニズムなのだろうか。

ホモ・サピエンスが生き残ったのは音楽のおかげ!?

 本書の「イントロダクション」では、音楽と人間の驚きの関係が明かされている。なんと、私たちホモ・サピエンスは、音楽があったから生き残れたのかもしれないそうなのだ。

 かつて地球上には人類種が数十種も存在したが、およそ3~4万年前にはホモ・サピエンスとネアンデルタール人の2種のみになったと考えられている。ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスよりも身体が頑丈で、脳の容量も大きかった。つまりネアンデルタール人はホモ・サピエンスよりも強く賢かったということだ。それなのになぜネアンデルタール人は絶滅し、私たちホモ・サピエンスだけが生き残ったのだろうか。

 2009年、ホモ・サピエンスの一種であるクロマニヨン人の遺跡から、マンモスの牙やハゲワシの骨で作られた、世界最古のフルートが見つかった。ホモ・サピエンスは、3~4万年前から音楽をたしなんでいたのだ。一方で、ネアンデルタール人の遺跡からは、音楽や楽器に関する考古学的証拠は見つかっていないそうだ。

 本書では、認知考古学者のスティーヴン・ミズン氏による、こんな学説を紹介している。

ネアンデルタール人は、(中略)音楽でもなく言葉でもない、その前駆的で中間的なコミュニケーション方法を使っていた。一方、ホモ・サピエンスは「言語」と「音楽」を分けたため、それぞれを発達させ「協調行動」や「団結」が促されたのではないか。

 この学説が正解かどうかはまだわからないが、どうやら音楽は、私たちの脳を発達させ地球上で生き残らせるために、大きな役割を果たしてきたようだ。

 大昔、ホモ・サピエンスの命を救った(かもしれない)音楽は、現代の私たちの脳にもたくさんの嬉しい効果をもたらしてくれる。本書では、2021年に発表されたスタンフォード大学医学部サイモン・ライポルト氏らのチームによる研究報告が紹介されている。

それは、楽器の種類、そしてプロやアマを問わず、「楽器を演奏する人の脳としない人の脳では、明らかに演奏する人の脳のほうが神経ネットワークの連携力が強い」というものです。

 音楽が、人の脳に大きく作用しているのは確かなようだ。本書では、音楽による「子どもの脳を開発する」「脳の老化を防止する」「認知症を予防する」といった嬉しい効果を解説している。ぜひ本書を参考に、あなたも「音楽する」を始めてみては?


【目次】
●イントロダクション 「音楽する」は脳に効く?
 重野知央(尚美学園大学芸術情報学部教授)
●第1章  演奏中は脳ですごいことが起きている
 金丸和富(医師)
●第2章 「聴く力」が子どもの脳を開発する
 加藤俊徳(脳内科医)
●第3章 「脳の老化」防止には演奏が強力な武器になる
 和田秀樹(精神科医)
●第4章 「認知症」は演奏で最大限予防できる
 阿部康二(医師)
●第5章 エッセー「私と音楽」
 菊地幸夫(弁護士)
 林田直樹(音楽評論家)
 蔵島由貴(ピアニスト)
 菊田浩(ヴァイオリン製作者)
 須永由美子(広報・PRコンサルタント)

■重野知央(しげの・ともお)さん
尚美学園大学芸術情報学部音楽応用学科教授。早稲田大学法学部卒。広告代理店ADK ホールディングス(旧旭通信社)を経て、ソニー・ミュージックエンタテインメントにてJ-POPの宣伝プロモーターなどを担当。東芝EMI(現ユニバーサル・ミュージック)に移り、EMI クラシックス制作ディレクター、および新人発掘育成プロデューサーを歴任。現在は、(有)アルデンテ・ミュージック・トーキョー取締役、大学教員を兼任。


※画像提供:Gakken


   
  • 書名 「音楽する」は脳に効く
  • サブタイトル弾く・聴く・歌うで一生アタマは進化する
  • 監修・編集・著者名重野知央 編著、金丸和富、加藤俊徳、和田秀樹、阿部康二、菊地幸夫、林田直樹、蔵島由貴、菊田浩、須永由美子 著
  • 出版社名Gakken
  • 出版年月日2022年10月20日
  • 定価2,200円(税込)
  • 判型・ページ数A5判・176ページ
  • ISBN9784058018910

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