言った本人に悪気はなくても、なんだかもやっとする発言。たとえば、こんな言葉を言われたり、耳にしたりしたことはないだろうか。
「女性のわりには話が通じるね」
「女性ならではの視点」
「子どもがいないからできることだね」
「女の子に淹れてもらったお茶はおいしい」
「そんな恰好してるのも悪いんじゃない?」
「その年まで独身なら結婚(出産)は考えてないんでしょ?」
「女を捨ててるね」
「的外れではないし...」と受け入れる人もいれば、「波風立てたくないから」と聞き流す人もいるかもしれない。しかし、こうした言葉は「女性を勝手に区別したり、枠にはめこもうとしたりする『ずるい言葉』だ」と指摘するのは、差別を専門とする社会学者・森山至貴さんだ。
新著『10代から知っておきたい 女性を閉じこめる「ずるい言葉」』(WAVE出版)では、こうした言葉がなぜ人の口から発せられてしまうのか、そこにどんな意図や背景があるのかを、丁寧に分析・考察していく。
たとえば、会社でのこんなやり取り。
女性社員「なんで私もこのプロジェクトのメンバーなんですか?」
男性社員「最終的には新しい女性向けの医療保険を作ることが目標だからね」
女性社員「でも私、ずっと学資保険の担当でしたよ」
男性社員「山口さんは女性だからだよ。女性ならではの視点からの意見が欲しくてさ」
森山さんは、ある人が自分に「女性ならではの視点」が求められていることがわかったからといって、「納得して前向きになれるものでしょうか」と疑問を呈している。
これでは「私の女性としての経験の中には価値のないものもあると自身で認めること」が要求されているわけで、むしろ女性の経験は軽視されていないでしょうか。
そもそも男性には「男性ならではの視点」を期待されることは少ない。期待されるとしたら、「その人なりの視点」だ。これを社会学の用語では「マジョリティ特権」と言う。「自らが属する集団の人々の意見を集約したり反映させたりすることなく、自分自身の意見を自由に述べられるのは、じつは誰にでも与えられていれるものではなく、マジョリティに特有のもの」だという。この場合の「マジョリティ」とは、男性だ。
「女性ならではの視点」を期待されるとき、女性は知らず知らずのうちに個人ではなく「女性の代表」として発言したりアイデアを提供したりすることを求められます。
本書ではこうした「ずるい言葉」を見抜き、女性が自分らしく生きていく強さを身につけるための考え方を、社会学の専門知識に照らしてわかりやすく、やさしく教えてくれる。
また、「産みたくても産めない人もいるのに」「うちの女の子」「更年期障害じゃない?」など、気になる言葉から女性に押しつけられる役割を考察したコラムも必読だ。
■目次
第1章 "女の人生"を勝手に区別する言葉
第2章 "わりには""ならでは"で軽視する言葉
第3章 "本物の女"を押し付ける言葉
第4章 "大事にする"を勘違いした言葉
第5章 "褒める"で決めつけを隠す言葉
第6章 "男らしさ、女らしさ"を刷り込む言葉
第7章 "あなたも悪い"で突き放す言葉
おわりに
■森山 至貴さんプロフィール
もりやま・のりたか/1982年神奈川県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻(相関社会科学コース)博士課程単位取得退学。東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻助教を経て、現在、早稲田大学文学学術院専任講師を経て、現在は同准教授。専門は、社会学、クィア・スタディーズ。著書に『「ゲイコミュニティ」の社会学』(勁草書房)、『LGBTを読みとく―クィア・スタディーズ入門』(ちくま新書』、『10代から知っておきたい あなたを閉じこめる「ずるい言葉」』(小社)がある。
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