コロナ禍で遠出がためらわれる状況は2021年になっても続いている。旅行好きな人にとってはもう少し我慢の時だが、晴れて旅行ができるようになったらどんな旅をしたいか想像を巡らせてみるのも一興だ。
というのも、コロナ収束後の旅の姿は、おそらくこれまでとは違うものになる。「密」を避け、混雑を避けることを基本とした旅は、新しい価値や楽しみを生み出すかもしれない。
参議院議員の山谷えり子さんもまた、人生を旅に導かれてきた一人。
著書『新しい「日本の歩き方」――まだまだ知らない魅力がいっぱい、旅で元気になろう』(扶桑社刊)では、これまで知られていなかった日本の魅力に触れることができる、新しい旅の形を予見している。
日本政府観光局は、コロナ収束後のインバウンド誘客戦略として、旅行者が「密」にならない地方の自然型体験型観光に注力する姿勢を打ち出している。ここ数年注目されてきた里山体験や農泊などの体験型の旅は、コロナ後はさらに充実していくことが予想される。
たとえば奈良県吉野町上市にあるゲストハウス「三奇楼」は、かつて林業で栄えたものの、その衰退とともに活気をなくした町に再び活力を、と長く使われていなかった旅館を地元の人々が中心となってリノベーションした施設だ。
部屋にテレビはないが、吉野川のせせらぎを聞きながら過ごす静かな時間は何にも代えがたい。地元の野菜やブランド和牛をつかって料理を楽しんだり、吉野檜や吉野杉の浴槽に浸かったりと、この土地の魅力を存分に体験できる点が人気を呼んでいる。「豪華」ではないが、「贅沢」な時間を過ごせるのが、体験型の旅の最大の魅力だろう。
こうした取り組みをしているのは地方だけではない。東京都檜原村も自然や特産品など、地元性を前面に出した旅を打ち出している。地域が主催するイベント等を通して土地の魅力を知ってもらおうという取り組みである。観光資源が豊富なことに加えて、都心から比較的近いという地の利も、旅人を引きつけるアピールポイントとなっているようだ。
世界遺産や観光名所を回る旅もいいものだが、せっかく現地まで行くのだから、その土地の表面だけをなぞって終わるのはもったいない。土地の風土や歴史、人と深く溶け合う旅。これから主流になっていくはそんな旅なのかもしれない。
山谷さんが日本各地の見どころだけでなく、新しい旅のスタイルや価値観、目的を提案する本書は、「コロナ収束後はまず旅をしたい」という人に、新しい楽しみを与えてくれるはずだ。
(新刊JP編集部)
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