仕事が終われば、休息を取るというのが生活の基本。
しかし、休み方が下手だという人もいる。どのように休んでいいのか分からない。一番心身が休まる方法が見つからない。
まさに、そういった人たちのためにある本が『休息の科学 息苦しい世界で健やかに生きるための10の講義』(クラウディア・ハモンド著、山本真麻訳、TAC出版刊)だろう。
毎日を元気に過ごすためには必要な休息。では一体何をすれば最も休息の効果を得られるのだろうか?
本書の著者である心理学者のクラウディア・ハモンド氏は、休息を研究するチームに2年間所属。ロンドンの博物館内にオフィスを借り、チームに「Hubbub」(ざわめき、騒ぎなどの意味)と名付け、休息について調査をするべくオンラインアンケートを作成。ハモンド氏がプレゼンターを務めるBBCラジオの番組で参加を呼び掛けた。
このアンケートの前半では、「休息をどのくらいとっているか」「理想としてはどのくらいとりたいか」「何をしているときに最も休息できるか」を尋ねた。また、後半では、回答者の性格と心身の健康度を尋ね、思考を移ろわせる習慣があるかを測る質問を投げかけた。
その結果、なんとアンケートに135カ国から18000人もの人が参加。その回答から、人々が休息になると挙げた活動トップ10が明らかになった。
このトップ10を眺めていると、意外なことに気づく。例えば「友人や家族と一緒に過ごす」はトップ10に入っていない(12位だったという)。確かに、他人と繋がることは人生を豊かにするが、休息という点からいえば「他人から距離を置く」ほうが心が休まるのかもしれない。
また、ハモンド氏自身が好きな「ガーデニング」もトップ10に入らなかった。さらに、「アート」や「ペットと過ごす」といった定番の休息方法もトップ10にはない。なかば無意識に行っている人も多いであろう「インターネットやソーシャルメディアを楽しむ」も上位には入らなかった。
では、世界の人々が選んだ休息トップ10は一体どんなランキングになっているのか。
それがこちらである。
第10位 マインドフルネス
第9位 テレビ(動画コンテンツ)を見る
第8位 空想にふける
第7位 入浴
第6位 長めの散歩
第5位 特に何もしない
第4位 音楽を聴く
第3位 一人になる
第2位 自然のなかで過ごす
第1位 読書
なんと、一番人気の休息方法は読書だった。これにはハモンド氏も驚いたという。なぜなら、読書は受動的な娯楽ではなく、さまざまなレベルの認知面での労力が必要とされる活動だからだ。
実際、ヴィクター・ネルというジンバブエ出身の臨床心理士が、1988年に読書家たちを募って行った実験によって、読書は熱心な読書家にとってはリラックスできる活動であるが、脳を休ませたり、身体の活動を止めたりする活動ではないということが結論づけられている。それはつまり、ともすれば疲労がたまる活動であるとも言える。
しかし、多くの人が読書は休息であると言っている。しかも、ランキング1位だ。それは一体なぜなのか。
ハモンド氏は読者が休息となりえるのは、自分の世界から逃避できるからだと述べている。
今、自分が抱えている問題や思考をいったん手放し、本の世界に浸る。それがくつろぎをもたらすというのだ。
ただし、もちろんすべての本がくつろぎをもたらすわけではない。ある研究では、身体的な苦しみから最も気を紛らわせたのは、一番難解で示唆に富んだ文学作品だったという。つまり、物語が興味をそそる複雑なものであるほど、被験者は夢中になり、痛みを認識しにくくなったというのだ。
他にも本書では神経科学面をはじめ、さまざまな見地から休息としての「読書」の効能についてつづられている。
本書ではトップ10にランクインしたそれぞれの「休息法」を科学的に検討している。ひとえに体を休める、心を休める、何も考えないといったものだけが休息になるのではなく、「長めの散歩」など、時には軽い疲労感を覚えるものでも休息となる。
休息が足りていない、休息ができていないという人にとっては、本書の内容は大いに参考になるものだ。巻末には「しっかりと休息するためのルール」も書かれている。日々を元気に過ごすためにも、自分にとって最高のリラックス法を探してみてほしい。
(新刊JP編集部)
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