10月29日に最終回を迎えるNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』で、清原果耶さん演じるヒロイン・永浦百音の職業として注目されているのが「気象予報士」だ。
芸能界では石原良純さんや矢部太郎さん(カラテカ)、阿部亮平さん(SnowMan)など資格を持っている方は意外と多いが、『おかえりモネ』でも触れられている通り、気象予報士試験は合格率わずか5%ほどの超難関資格。そして、「お天気キャスターになるための資格」と思いきや、気象会社や気象庁、自治体、自衛隊など、活かせる職場は幅広い。
『ユーキャンの気象予報士 入門テキスト きほんの「き」』(ユーキャン気象予報士試験研究会著・編、ユーキャン刊)は、気象予報士試験合格を目指す人が開く「最初の一冊」として作られた。というのも、難関資格だけあって気象予報士試験の参考書や対策本はどれも分厚く、難しい。初学者でも取り組みやすいテキストが、これまであまりなかったのだ。
本書では合格のために「優先的に身につけるべき知識」を、広大な学習範囲を網羅しつつ、専門用語を極力減らしてわかりやすく解説。その後の勉強の足がかりを作ってくれる。実際の試験問題に触れることができるのもありがたい。
では、気象予報士試験にはどんな問題が出題されるのか。
「予報業務に関する一般知識」
「予報業務に関する専門知識」
「実技試験」
と3科目あるなかの「一般知識」の問題からいくつか見ていこう。
問題1
降水過程におけるエーロゾルの役割に関する次の文(a)~(c)の太字部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から一つ選べ。 (補足として、エーロゾルとは、空気中に浮遊するちりなどの固体や液体の粒子のことであり、エーロゾルと水蒸気が合わさって雲が生成され、いずれは雨になったり、蒸発して消滅する。)
(a)エーロゾルを含まない清浄な空気中では、相対湿度が101%になっても水滴は形成されない。これは、小さな水滴が平衡状態として存在するために必要な 過飽和度が1%よりも高い からである。
(b)水溶性のエーロゾルの働きによって大気中に発生した水滴は、溶解した物質の効果により 相対湿度が100%に達しなくとも水滴として存在できる 。
(c)大陸上の積雲は、一般に海洋上の積雲に比べて単位体積あたりの雲粒の数が多く、かつ雲粒の平均的な大きさは小さい。これは、凝結核として働く単位体積あたりのエーロゾルの数が、 大陸上の方が海洋上に比べて多い ことによる。
①(a)正(b)正(c)正
②(a)正(b)誤(c)誤
③(a)誤(b)正(c)正
④(a)誤(b)正(c)誤
⑤(a)誤(b)誤(c)正
□解説と解答
(a)エーロゾルを含まない清浄な空気中では、相対湿度が101%になっても水滴は形成されない。これは、小さな水滴が平衡状態として存在するために必要な 過飽和度が1%よりも高い からである。よって(a)は正。
(b)水溶性のエーロゾルの働きによって大気中に発生した水滴は、溶解した物質の効果により 相対湿度が100%に達しなくとも水滴として存在できる 。(b)は正。
(c)大陸上の積雲は、一般に海洋上の積雲に比べて単位体積あたりの雲粒の数が多く、かつ雲粒の平均的な大きさは小さい。これは、凝結核として働く単位体積あたりのエーロゾルの数が、 大陸上の方が海洋上に比べて多い ことによる。(c)は正。
(a)(b)(c)すべて正。よって正解は①。
問題2
放射について述べた次の文(a)~(c)の太字部の正誤の組み合わせとして正しいものを、下記の①~⑤の中から一つ選べ。
(a)地球大気の中で地球放射を多く吸収している気体は、 二酸化炭素とアルゴンである 。
(b)二酸化炭素には、2.5~3マイクロメートル、4~5マイクロメートル、および15マイクロメートル付近の波長領域に強い吸収帯があり、この領域は 窓領域と呼ばれている 。窓領域は人工衛星による雲域等の観測に役立っている。
(c)一般に、雲頂高度が高いほど、雲頂から上向きに放射される赤外放射は 多くなる 。
①(a)正(b)正(c)誤
②(a)正(b)誤(c)正
③(a)誤(b)正(c)誤
④(a)誤(b)誤(c)正
⑤(a)誤(b)誤(c)誤
□解説と解答
(a)地球の表面から宇宙空間へ向かう地球放射(赤外放射)の多くを熱として大気に蓄積させ、再び地球の表面に放出することで、地球の表面付近の大気を緩める効果を持つ気体を「温室効果気体」という。つまり問題文の「地球大気の中で地球放射を多く吸収している気体」は温室効果気体のこと。温室効果気体のうち、温室効果に大きく寄与しているのは、水蒸気と二酸化炭素なので(a)は誤。
(b)窓領域(大気の窓)は、波長11マイクロメートルを中心とする8~12マイクロメートルの領域で、オゾンの波長帯を除くと、吸収率は低いので(b)は誤。
(c)水蒸気(雲)から放射される赤外放射の強さは、雲の温度によって変化する。温度が高いほど強く(多く)、低いほど弱く(少なく)なる。一般に雲頂の高度が高いほど温度は低いので、雲頂からの上向きの赤外放射は少なくなる。(c)は誤。
(a)(b)(c)すべて誤。よって、正解は⑤。
◇
今回は紹介した2問は、いずれも気象についての基本的な知識を試すもの。本書は入門書ではあるが、気象予報士試験には入門書の知識があれば解ける問題も少なくない。
また、気象災害の多い日本で、気象の知識は一般の人も持っておきたい「教養」でもある。「気象の世界の入り口」として、プロを目指す人にも、そうでない人にも、本書は学びを与えてくれるだろう。
(新刊JP編集部)
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