地球温暖化問題が取り上げられる時に「ティッピング・ポイント」という言葉が用いられることがある。ティッピング・ポイントとは、それまで小さく変化していたある物事が、突然急激に変化するポイントを意味する言葉で、「臨界点」「閾値」と言い換えられることがある。
地球温暖化問題でも、温室効果ガスの量がある一定の閾値を超えると爆発的に温暖化が進み、手遅れの事態に陥ってしまうと危惧するときなどに「ティッピング・ポイント」は使われることが多い。
大量の二酸化炭素を排出し続けることで今の社会を作ってきた人たちが原因で未来の可能性が閉ざされてしまうことがあるのだとしたら、それはおそらく数百年先だが、その未来が決められてしまうティッピング・ポイントはおそらく数年先になる、とするのが『地球温暖化 /電気の話と、私たちにできること』(田中優著、扶桑社刊)だ。何年先かは誰もわからないことだが、「あと4年しかない」という意見もある。
二酸化炭素の大部分を排出しているのは個人活動よりも企業活動だ。だから、排出を減らすためには個人でエコバッグを持つ、ライフスタイルを変えるだけでは間に合わない。そこで、本書では、20年以上にわたって「地球温暖化の危機」を説き、日本全国で講演をし続けてきた未来バンク理事長、ap bank監事の田中優氏が温暖化問題を解決する可能性がある方法を解説する。
地球温暖化を起こしている大きな原因は温室効果ガスの排出だ。この温室効果ガスのうち、90%以上の比率を占めているのが二酸化炭素。
二酸化炭素排出量を減らすためには、主に二つの方法がある。一つは「電力送電網からの独立」という電力需給システムを根本的から改革するという案。もう一つは、「炭素を森林・土壌に貯め込んでいく」という方法。この二つの方法で、大気中の二酸化炭素をかなり削減できるはず、というのが田中氏の提案だ。
「炭素を森林・土壌に貯め込んでいく」というのは、二酸化炭素を排出する前に、大気中の炭素を減らしておくという「先減らし」の方法。「先に減らしておいてその分を後から使おう」という「炭素の貯金」ができることになる。「後から何とかする」「後で何とかなる」と、先に二酸化炭素を排出しておいて後から埋め合わせる無責任な考え方が、これまでの地球温暖化問題を起こしてきた原因ではないか、と田中氏は考えたのだ。
炭素貯金は「1.植林」「2.育林」「3.木質バイオマス(ペレットストーブなどの燃料として利用)」という流れになる。では、どのくらい効果があるのか。まず「日本で1ヘクタールの森を育てた」としたら、どれだけの二酸化炭素排出を減らせるのか。林野庁のデータによると「36~40年生のスギ人工林は1ヘクタール当たり約3020トンの二酸化炭素(炭素量に換算すると約82トン)」とされている。その植林と育成した分を炭素貯金しておいて、それから二酸化炭素を排出するほうが健全ということだ。
今はまだ大丈夫でも、地球温暖化の被害を受けるのは未来の将来世代だ。今できることは何なのか。本書から地球温暖化について学んでみてはどうだろう。
(T・N/新刊JP編集部)
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