残業しないと仕事が終わらない。
ギリギリまで粘ってやっているけれど結局成果も出ない。
「時間が足りない」という悩みは現代人の病ともいえる。仕事の効率を上げようと思っても、次々と仕事が降ってくるため、与えられた業務をこなすのでいつも精一杯になってしまう。
しかし、そんな中でも定時に仕事を終わらせ、成果もしっかり出す社員がいる。彼らはなぜ時間に追われることなく、仕事を完遂させられるのだろうか。
元日本マイクロソフト役員で現クロスリバー代表の越川慎司氏はこれまで815社の働き方改革を支援。クライアント企業に協力を仰ぎ、各社の人事評価トップ5%の社員の言動や習慣をAIで分析。そこからあぶりだした彼らの時間の使い方を『AI分析でわかった トップ5%社員の時間術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン刊)にまとめている。
では、トップ5%社員と残りの95%社員の違いはどんなところにあるのだろうか?
本書の中から3つ取り上げよう。
分析の結果、トップ5%社員は一人で作業しているとき、「ため息」をついていることが分かったという。それもなんと、95%社員の2.2倍もついているのだから驚きだ。
ネガティブなイメージがある「ため息」だが、呼吸器の専門家によると、深い呼吸の動作で脳のはたらきや精神的な落ち着きをもたらすプラスの効果があるという。仕事に入る前に一度ため息をついて心と体を安定させることは、集中力を増すという意味で理にかなっている。
越川氏は、トップ5%社員は共通して「初動が速い」と述べる。
仕事を受けたら間髪入れずにスタートする。これは業務の時短を達成するために必要不可欠な要素だ。そして、彼らは初動を速めるために、各々が仕事前のルーティンを持っている傾向にある。「ため息」はそのルーティンの一つととらえていいだろう。
時短とセットで出てくる言葉といえば「効率」だ。業務の効率が上がれば仕事の生産性もアップする。そのため、「効率化」が業務改善のスローガンに使われることも多い。
しかし、トップ5%社員は「効率」よりも重視していることがあるという。それが「効果」だ。
「仕事を進める上で効果と効率のどちらを優先させますか」というアンケートを行ったところ、一般社員は「効率」と答えた人が53%に対し、「効果」が47%だった。一方のトップ5%社員は「効率」が21%に対し、「効果」が79%。大きく差が出たのだ。
効率化は生産性を上げるための手段であり、目的ではない。5%社員は「効率」という言葉に疑問を抱いており、「何でもかんでも短い時間でやればいいわけではない」と考えているという。まずは「明確な目標を持つ」ことが重要であり、効率にとらわれてしまわないように注意すべきだろう。
トップ5%社員はタスクマネジメントにも特徴がある。それは、「仕事を受けるかどうか考えることもタスクマネジメントの一部」と考えていることだ。
さらに、受けた仕事は必ずしも自分でやるわけではなく「誰かに依頼する」という選択肢も持っている。「期限内にタスクを終える」という目的がまず先に立ち、その目的を達成するために、自分以外の人が取り組んだ方がいいのであれば他の人に依頼をする。
もちろん、依頼をするときは相手のベネフィットや内容の意義・目的を伝え、相手が納得した上で仕事を振っている。
越川氏は、トップ5%社員は人を巻き込むコミュニケーションスキルを磨くことに時間を費やしていると述べる。巻き込み方のメソッドが確立できれば、より大きな課題を短期間で解決できるようになるからだ。
何でも自分でやろうとせず、適切なタスクマネジメントができるようになれば、時間にぐっと余裕が生まれるはずだ。
ここで取り上げたもの以外にも、「上司との接触時間を減らす」や「45分単位で仕事をする」、「金曜日に重要な仕事を2つ書き出す」など様々な時間術が紹介されている。トップ5%社員たちが実践しているタスク遂行術を一般のビジネスパーソン2.2万人で再現実験したら89%の人が効果を実感したそうだ。
本書は読んで終わりではなく、実践をしてこそ初めて効果を発揮する。残業沼で心の余裕も持てない状況を抜け出すためにも、ぜひトップ5%社員の時間術をいくつか試してみてほしい。
(新刊JP編集部)
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